15.甲斐

【芭蕉自筆影印】
 甲斐の山中耳立よりて

 行駒の麦尓慰むやとり哉

卯月の末 庵耳帰りて 旅のつ可禮を者らす本と耳

 夏衣いま多虱をとりつくさ寸

(甲斐の山中に立よりて

 行駒の麦に慰むやどり哉

卯月の末、庵に帰りて、旅のつかれをはらすほどに

 夏衣いまだ虱をとりつくさず )

【句碑】
①万福寺
 山梨県甲州市勝沼町等々力1289

 行駒能麥仁慰む屋土里可那 (?)
(行駒の麦に慰むやどりかな)



②詠地付近になし

(夏衣いまだ虱を取り尽さず)


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14.桑名・鳴海・熱田

【芭蕉自筆影印】
 伊豆の國 蛭可小嶋の僧桑門 こ禮も去年の秋より 行脚志て遣る耳 我可名を聞て 草の枕の道つ禮尓もと 尾張の國まて 跡を志多ひ来り遣れば

 いさともに穂麦喰ハん草枕

此僧 予に告ていはく 圓覺寺の大顛和尚 今年陸(?)月の初 迁(遷)化したまふよし まことや 夢の心地せらるゝ尓 先 道より其角可許へ申遣しける

 梅こひて卯花拝むなミ多哉

杜国尓於くる

 白遣し尓者年もく蝶乃形見哉

二多ひ桐葉子可もと尓有て 今や東尓下らんとする耳

 牡丹蘂(シベ)婦可く分出る蜂の名残哉

伊豆の國、蛭が小嶋の僧桑門、これも去年の秋より、行脚してけるに、我が名を聞て、草の枕の道づれにもと、尾張の國まで、跡をしたひ来りければ

 いざともに穂麦喰はん草枕

此僧、予に告ていはく、円覚寺の大顛和尚、今年睦(?)月の初、迁(遷)化したまふよし。まことや、夢の心地せらるゝに、先、道より其角が許へ申遣しける

 梅こひて卯花拝むなみだ哉 

杜国におくる

 白げしにはねもぐ蝶の形見哉

二たび桐葉子がもとに有て、今や東に下らんとするに

 牡丹蘂(シベ)ふかく分出る蜂の名残哉   )

【句碑】
①詠地付近になし

(来興に穂麦喰はん草枕)(イザトモ)
 別市町村 愛知・春日井市 正念寺

②詠地付近になし

(梅恋ひて卯花拝む涙哉)
 別市町村 静岡・沼津市 浄因寺

③詠地付近になし

(白芥子に羽もぐ蝶の形見かな)

④詠地付近になし

(牡丹蘂深く分出る蜂の名残哉)(シベ)





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13.大津・唐崎・水口

【芭蕉自筆影印】
 大津尓出る道 山路をこえて

 山路来て何やらゆ可しすみ禮草

湖水の眺望

 辛崎能松盤花より朧尓て

水口尓て 二十年を經て 故人に逢ふ

 命二つ能中尓生太る桜哉

大津に出る道、山路をこえて

 山路来て何やらゆかしすみれ草

湖水の眺望

 唐崎の松は花より朧にて

水口にて、二十年を経て、故人に逢ふ

 命二つの中に生たる桜哉 )

【句碑】
①詠地付近になし

山路来て何やらゆかしすみれ草)
  別市町村 湖南・ほほえみの水辺

②唐崎神社
 大津市唐崎1-7-1


 唐崎能松ハ花与梨朧尓て
(唐崎の松は花より朧にて)

③大岡寺
 滋賀県甲賀市水口町京町1-30山門

いの知婦多川△(?)中に活堂留さくら可奈
(いのちふたつ中に活たるさくらかな)
  (命二つの中に活たる桜かな)





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12.京都


【芭蕉自筆影印】
 京耳の本りて 三井秋風可 鳴瀧の山家をとふ
梅林
 
 梅白し昨日ふや鶴を盗連し

 樫の木乃花耳可ま者ぬ姿可那

伏見西岸寺 任口上人尓逢(?)

 我可きぬ尓婦しみの桃の雫せよ

(京にのぼりて、三井秋風が、鳴瀧の山家をとふ。
梅林
 
 梅白し昨日ふや鶴を盗れし

 樫の木の花にかまはぬ姿かな

伏見西岸寺、任口上人に逢(?)

 我がきぬにふしみの桃の雫せよ 

【句碑】
①北音戸山橋の下
 京都市右京区鳴瀧蓮池町 
 Google Mapに句碑表示有

 梅白しき能ふや鶴を盗禮し
(梅白しきのふや鶴を盗れし)
「自筆『梅白し』ほか連句懐紙を拡大」

②西岸寺
 京都市伏見区下油掛町898

 我衣に婦し美能桃農(?)志徒くせ与
(我衣にふしみの桃のしつくせよ)
(我がきぬに伏見の桃の雫せよ)


③詠地付近になし

(樫の木の花にかまはぬ姿かな)
  別市町村 群馬・前橋市・香集寺




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11.奈良

【芭蕉自筆影印】
 奈羅尓出る道の本と

 春奈連や名もなき山能薄霞

二月堂尓籠りて

 水とりや氷の僧能沓の音

(奈らに出る道のほど

 春なれや名もなき山の薄霞

二月堂に籠りて

 水とりや氷の僧の沓の音 

【句碑】
①旧大和街道
 伊賀市長田
 R163三軒屋交差点~北・数百m・左・民家数軒・奥


 春奈連や名もなき山能薄霞
(春なれや名もなき山の薄霞)

②東大寺
 奈良市雑司町406-1
 三月堂左奥 灯籠付近「龍王之滝」



 水取や籠りの僧能沓乃音
(水取や籠りの僧の沓の音)
(水とりや氷の僧の沓の音)



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10.伊賀上野

【芭蕉自筆影印】
 爰耳草鞋をとき 可しこに杖を捨て 旅寝な可らに 年能暮希連者

 年暮ぬ笠きて草履者きな可ら

と いひゝゝも 山家耳年を越て

 誰か聟そ歯朶尓餅於ふうしの年

(爰に草鞋をとき、かしこに杖を捨て、旅寝ながらに、年の暮ければ
 
 年暮ぬ笠きて草履はきながら

と、いひゝゝも、山家に年を越て

 誰が聟ぞ歯朶に餅おふうしの年)

【句碑】
①新堂駅南口
 伊賀市新堂中出318ロータリー中央

 登しく禮ぬ笠きて草履者き奈可ら
(としくれぬ笠きて草履はきなから)

②詠地付近になし

(誰が聟ぞ歯朶に餅おふ丑の年)
                                               (ムコ・シダ)


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9.桑名・熱田・名古屋

【芭蕉自筆影印】
 桑名本統寺にて

 冬牡丹千鳥よ雪能本とゝきす

草の枕尓寝あきて ま多ほのくらきうちに 濱の可多に出て

 明本のやしら魚志路きこと一寸

熟田に詣
社頭大イニ破れ 築地盤多ふれ? 草村尓可くる 可しこ尓縄を者りて 小社の跡を志るし 爰耳石をすえて 其神と名のる よもき しのふ 古ゝろ能まゝに生多る楚 中ゝ尓めて多きよりも 心とゝまりける

 志のふさへ枯て餅かふやとり哉

名護屋尓入道の程 風吟ス

 狂句木枯能身ハ竹斎尓似多る哉

 草枕犬も時雨ゝ可よる能こゑ

雪見尓あ里きて

 市人与此笠うらふ雪能傘

旅人をみる

 馬をさへな可むる雪能朝哉

海辺尓日暮して

 海く禮て鴨のこゑ本の可に白し 

(桑名本統寺にて

 冬牡丹千鳥よ雪のほとゝぎす

草の枕に寝あきて、まだほのぐらきうちに濱のかたに出て

 明ぼのやしら魚しろきこと一寸 

熟田に詣
社頭大イニ破れ、築地はたふれ? 草村にかくる。かしこに縄をはりて、小社の跡をしるし、爰に石をすえて、其神と名のる。よもぎ、しのぶ、こゝろのままに生たるぞ、中ゝにめでたきよりも、心とヾまりける。

 しのぶさへ枯て餅かふやどり哉

名護屋に入道の程、風吟す。

 狂句木枯の身は竹斎に似たる哉

 草枕犬も時雨ゝかよるのこえ

雪見にありきて

 市人よ此笠うらふ雪の傘

旅人をみる

 馬をさへながむる雪の朝哉

海辺に日暮して

 海くれて鴨のこえほのかに白し )

【句碑】
①本当寺(本統寺)
 桑名市北寺町47

 冬牡丹千鳥与雪能ほ登ゝ幾須
(冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす)


②龍福寺
 桑名市地蔵455

 雪薄し白魚志路き事一寸
(雪薄し白魚しろき事一寸)


③龍福寺

 明本乃やしら魚白き事一寸
(明ぼのやしら魚白き事一寸)
「自筆『明ぼのや』発句短冊を拡大」

④蕉風発祥之地
 名古屋市中区錦3
 久屋大通TV塔東北角脚

 狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉


⑤詠地付近になし

(しのぶさへ枯て餅買ふやどり哉)

⑥詠地付近になし

(草枕犬も時雨るか夜の声)
  別市町村 大崎市・観水寺跡観音堂

⑦詠地付近になし

(市人よ此笠売らう雪の傘)

⑧詠地付近になし

(馬をさへながむる雪の朝哉)(詠)
  別市町村 長野・軽井沢

⑨詠地付近になし

(海暮れて鴨の声ほのかに白し)
  別市町村 愛知・半田市 尾張三社



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