14.桑名・鳴海・熱田

【芭蕉自筆影印】
 伊豆の國 蛭可小嶋の僧桑門 こ禮も去年の秋より 行脚志て遣る耳 我可名を聞て 草の枕の道つ禮尓もと 尾張の國まて 跡を志多ひ来り遣れば

 いさともに穂麦喰ハん草枕

此僧 予に告ていはく 圓覺寺の大顛和尚 今年陸(?)月の初 迁(遷)化したまふよし まことや 夢の心地せらるゝ尓 先 道より其角可許へ申遣しける

 梅こひて卯花拝むなミ多哉

杜国尓於くる

 白遣し尓者年もく蝶乃形見哉

二多ひ桐葉子可もと尓有て 今や東尓下らんとする耳

 牡丹蘂(シベ)婦可く分出る蜂の名残哉

伊豆の國、蛭が小嶋の僧桑門、これも去年の秋より、行脚してけるに、我が名を聞て、草の枕の道づれにもと、尾張の國まで、跡をしたひ来りければ

 いざともに穂麦喰はん草枕

此僧、予に告ていはく、円覚寺の大顛和尚、今年睦(?)月の初、迁(遷)化したまふよし。まことや、夢の心地せらるゝに、先、道より其角が許へ申遣しける

 梅こひて卯花拝むなみだ哉 

杜国におくる

 白げしにはねもぐ蝶の形見哉

二たび桐葉子がもとに有て、今や東に下らんとするに

 牡丹蘂(シベ)ふかく分出る蜂の名残哉   )

【句碑】
①詠地付近になし

(来興に穂麦喰はん草枕)(イザトモ)
 別市町村 愛知・春日井市 正念寺

②詠地付近になし

(梅恋ひて卯花拝む涙哉)
 別市町村 静岡・沼津市 浄因寺

③詠地付近になし

(白芥子に羽もぐ蝶の形見かな)

④詠地付近になし

(牡丹蘂深く分出る蜂の名残哉)(シベ)





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