5.伊賀上野

【芭蕉自筆影印】
 長月の初 古郷尓歸りて 北堂の萱草も霜枯果て 今盤跡多尓なし 何事も昔尓替りて 者ら可ら能鬢白く 眉皺寄て 只命有て登のみ云亭 言葉はなきに この可み能守袋を保ときて 母の白髪おかめよ 浦島の子可玉手箱 汝可まゆもやゝ老多りと 志者ら具なきて

 手尓とら者消んなみ多楚あつき秋の霜

(長月の初、古郷に帰りて、北堂の萱草も霜枯果て、今は跡だになし。何事も昔に替りて、はらからの鬢白く、眉皺寄て、只命有てとのみ云て、言葉はなきに、このかみの守袋をほどきて、母の白髪おがめよ、浦島の子が玉手箱、汝がまゆもやゝ老たりと、しばらくなきて、

 手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜
              )
【句碑】
①柘植駅
 伊賀市柘植町 改札正面・道路反対側

 手耳とら者消無泪曽あつ支秋乃霜
(手にとらは消む泪そあつき秋の霜)


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