3.大井

【芭蕉自筆影印】
①紀行文

 大井川越る日盤 日雨降遣禮者

 秋の日乃雨江戸尓指おらん大井川
              ちり
馬上吟

 道のへ能木槿盤馬耳く者禮介利

廿日餘の月 可す可に見えて 山の根際いとくらきに 馬上耳鞭を多禮て 数里いま多鶏鳴ならす 杜牧可早行能残夢 小夜の中山尓至りて忽(タチマチ)驚く

 馬に寝て残夢月遠し茶能けふり

大井川越る日は、終日雨降ければ
              
 秋の日の雨江戸に指おらん大井川
              ちり
           
馬上吟

 道のべの木槿は馬にくはれけり

廿日余の月、かすかに見えて、山の根際いとくらきに、馬上に鞭をたれて、数里いまだ鶏鳴ならず。杜牧が早行の残夢、小夜の中山に至りて忽(タチマチ)驚く。

 馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり )

②「馬に寝て」自画賛
 者つ可あ万梨能月可す可にみえて や万の根き(麓)盤いとくら九 こ末能蹄も堂とゝゝし遣礼者 於ちぬへき事阿末多ゝひな梨介る耳 彼数里い末多鷄鳴ならすと云遣む杜牧(トボク)可早行(早立)能残夢 さよ能中山尓て堂ち末ち驚く

 馬尓寐て残夢月と越しちやの介ふ梨

(はつかあまりの月かすかにみえて、やまの根ぎ(麓)はいとくらく、こまの蹄もたどゝゝしければ、おちぬべき事あまたゝびなりけるに、彼数里いまだ鶏鳴ならずと云けむ杜牧(トボク)が早行(早立)の残夢、さよの中山にてたちまち驚く

 馬にねて残夢月とをしちやのけふり)

【句碑】
長光寺
 静岡県島田市金谷新町2253

 道能遍乃木槿波馬仁喰ハ禮介里
(道のべの木槿は馬に食われけり)

②金谷坂上 明治天皇御駐
 島田市金谷猪土居 
 お茶公園高台 旧東海道石畳下り口向

 馬尓寝天残夢月遠之茶能烟
(馬に寝て残夢月遠し茶の煙)

③芭蕉句碑掛川小夜鹿
 掛川市佐夜鹿 旧東海道沿
 久延寺より南西900m・白坂神社手前

 道のべのむくげは馬にくはれけり


④芭蕉句碑掛川日坂 
 掛川市日坂 旧東海道沿
 久延寺より南西1500m

 馬に寝て残夢月遠し茶のけふり



⑤久延寺 五葉松
 掛川市佐夜鹿291 旧東海道沿

 馬尓天残夢月遠し茶能煙
(馬に寝て残夢月遠し茶の煙)